子会社は叫ぶ―この国でいま、起きていること
月 29th, 2007
市場主義、自由主義のもとでのグローバルな経済競争の激化は、日本の企業社会にも大きな構造変化をもたらした。本書は、その「痛み」が先取りしてあらわれている数々の大企業子会社に注目したルポルタージュである。財界主導の構造改革ムーブメントが労働の自由化、低コスト体制の実現というスローガンに結びつき、子会社は急増した。この流れは、働く人々の生活と人生にどのような影響を及ぼしているのか。労働現場への豊富なインタビューと背景取材で明らかにしていく。
驚かされるのは、ほとんど無権利状態といってもいい子会社従業員の労働現場の実態だ。低賃金で過酷な内容の長時間労働を強いられながらも、親会社の意向ひとつで仕事を失うおそれにおびえ続けなければならないという現実。著者は、こうした構造と、多くの企業不祥事、あるいは企業を舞台にした事件、事故に子会社が関係している事実は深い相関関係にあると指摘する。人間の使い捨てを容易にする親会社と子会社の関係は、企業問題を超えて、国民生活の安全と安定にも悪影響を与えはじめているのだ。
子会社という存在は、ルールが明確にされぬまま、なし崩し的に進行する雇用環境の変化の象徴ともいえる。親会社と子会社で広がる所得格差は、社会的な階層分化にも直結している。さまざまな広がりのあるテーマが凝縮された本書は、光が当てられない下からの視点で大きな地殻変動をとらえた力作である。(松田尚之)クリエーター:島本 慈子
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